片流れの屋根には煙突があり、外観や外構も一般住宅とは一線を画すF邸。オリジナルの引き戸を開けて室内に入ると、木の温もりがあふれる空間に導かれる。吹き抜けのあるリビングに進むと、まず目に入るのがカウンターキッチンの上にあしらった飾り窓。室内を見渡すと絶妙の配置にアンティーク家具と花器が置かれており、和モダンの雰囲気をさり気なく演出する役割を果たしている。
　結婚当初から家を建てたいと思っていたというF夫妻。どうせ建てるなら納得がいくものにしたいと、家づくりの計画は数年かけて行ったという。素材も自然素材にこだわり、ふたりで一から勉強していった。
　施工会社である松井建設に相談しながら素材について学ぶうち、そのこだわりはさらに極まり、建具・造作・床材すべてを県産材でオール無垢材を使用することに。さらには不純物をふくまない火山灰シラスを内外装ともに採用して、断熱材は新聞古紙が原料のセルロースファイバーなど、とことん自然素材を使って家づくりを行っていったという。いっぽうデザイン面はF夫人が主になって担当し、建具や飾り棚もオリジナルで造作。祖母や母から受け継いだ古道具や小物を生かしながらお気に入りのアンティーク家具が調和する空間を考えていった。
　夫婦二人三脚で家づくりを行うなか、性差による目線の違いはあったが、その都度にじっくり話し合って解決し、ふたりの生活スタイルに合う住まいをつくり上げていったのだとか。その結果、「思った通りに仕上がった」とふたりともが納得する家に。家のなかで深呼吸がしたくなるような五感が心地良さを感じられる家が完成した。