老朽化が進んだ住まいでは、高齢のお母さまとの暮らしに不安を感じていたというご夫婦。大切な我が家なので何度もリフォームを検討しましたが、築50年以上の家で安心して生活しようと思うと、大改修が必要になってきます。そこで、思い切って敷地内に新しく建てようと計画を始めたそうです。
　設計する上で意識したのは、家族がゆったりとした時間を送れることです。平屋建ての切妻造で、インテリアは和モダンテイストに統一しました。屋根形状を生かした高さのある天井で、明るくのびやかな空間を確保しています。また、新築のための土地は、高低差のある形状でしたが、リビングから既存の庭を眺めることができるように造成し、基礎も高くしました。そのすべてが功を奏し、高級旅館のような雰囲気が漂っています。
　「母が過ごしやすいようにしました」と奥さま。リビングに隣接するお母さまの部屋には、トイレや洗面を設置しており、家じゅうバリアフリーに。廊下の幅は広めに取り、緊急時でも慌てることがありません。建具なども大きめサイズでオーダーし、機能性とデザイン性が両立した住空間となっています。
　外構にも工夫が光ります。顔とも言える玄関も広々と奥行きがあり、坪庭から見える緑や光がゲストを温かく迎えてくれます。アプローチには階段の横にスロープを設け、お母さまのお出かけもスムーズ。母屋との間に渡り廊下のようなウッドデッキを設け、行き来しやすくしています。
　新居へ移って数ヵ月、ストレスフリーな日常を過ごしているご一家。広々としたテラスで庭を眺めながらお茶を楽しむ余裕が生まれ、これからも穏やかに仲よく暮らしていくことでしょう。