黒い壁がすっぽりと家を包み込むような外観のK邸。外からは閉じており、なかの様子はうかがい知れない。しかし室内に入ると、あふれるほどの光が家中を照らしている。これは中庭を造り、その壁面をガラス張りにした効果だ。「全部建築家におまかせしてできたプランなんです」とK夫人。その結果、大正解だったと語る。
　K夫妻が家を建てたのは、実家が所有する借家に空きが出て急きょ土地を譲り受けたことがきっかけ。とつぜん家づくりがスタートし、HASの主催する建築家とつくる家相談会に参加して、家のプランを検討し始めた。当初から「キューブ型の家にしたい」と思っていたため、デザインを決めるにあたってキューブ型のラフプランを発注したのだとか。「想像していたのは、箱のなかに部屋を収めていくという、ふつうのプランでした。ですがHASさんは発想が全然違っていて、とても斬新な内容でした」とK夫人。外窓を少なくしてプライバシーを保護しつつ家中を明るくする、中庭があるプランは、この段階で完成。
　また、当初案では水まわりが２階だったが老後を考えて１階に水まわりをまとめ、さらに希望を盛り込んだ内容に変更してもらった。
　建築家と打ち合わせを重ねていくなかで「私たちの意見は完全に無視していいので、おもしろい案を出してくださいってお願いしました。そして出てきたのが今の“半地下の家”だったんです」。半地下に水まわりをまとめて、１階はワンフロアにし、２階を居室に。これも見たことのない斬新さで、ひと目で気に入ったのだとか。デザイン性だけでなく、住み心地も上々の住まいになった。