ドアを開けると、家のなかには青空の匂いが漂っていました。杜の家というコンセプトどおり、木と土をふんだんに使ったY邸は、どの部屋もやさしい香りがします。窓から入る光が床を照らせば、そこには陽だまりの香りが。窓を開けて風の通り道ができると、柱の匂いが鼻孔をくすぐります。
　前川材木店が手がけた新しい家は、まるで森林浴するような大地を感じる邸宅です。まず、ＬＤＫの床は傷に強いナラ材を使い、現場で大工さんが一枚一枚貼っていったという完全オリジナル。匠の手仕事による床は、硬い材質にもかかわらず、なめらかな感触です。変わって和室はヒノキを使用。香りのよさはもちろんのこと、白木のままのやわらかい色味が和の情緒を引き立てます。適材適所とはまさにこのことです。
　Ｙ邸の奥さまは京都出身。「京都時代は狭い家に住んでいたので、庭や廊下のある家に憧れていたんです」と話してくれました。そのため、Ｙ邸は和室の前の廊下や広い庭など、随所に余裕をもたせた設計です。ぜいたくですが、住空間以外にも「間」をとることで、家に余韻が生まれるのですね。
　Ｙさんに前川材木店を選んだ最大の決め手をお聞きすると、「世界観に共鳴したことと、前川社長のセンスを信じられたこと」という答えが返ってきました。奥さまがセレクトした照明器具やタイル、建具に入れるガラスなど細部へのこだわりは、前川材木店の手によって見事に組み込まれ、理想の家として実現しました。
　Ｙ邸は、華美でないけれど、ぜいたくな住まい。それは、母なる大地のおすそわけ。自然がつくり出した杜の家、誕生です。