ご主人には「ここに、帰ってくるんだ」という、幼いころからの原風景がありました。玄関を開けたときの、木の質感やご飯が炊ける匂い―。自身が生まれ育った家のような、そんな“心の拠りどころ”をふたりのお子さんにも作ってあげたいと、家づくりがスタート。生家に隣接して、新居を建てることが決まりました。
　もっとも重視したのは、母屋とのバランス。あくまで「離れ」なので、出すぎず統一感を持たせるため、生家と同じ日本瓦屋根の平屋建てにしました。２棟の間には中庭があり、ほどよい距離を保ちながら、つながっている―そんな安心感も伝わってきます。玄関を開けると、ほんのりヒノキの香りがし、施主のＦ夫妻と佳乃ちゃん２歳、浩匡くん６ヵ月が笑顔で迎えてくれました。
　ＬＤＫに入ってまず目を引くのは、ステンレス製のシンプルで機能的なキッチン。約３ｍのケヤキの木を使ったカウンターに料理を並べ、ホームパーティを催すことも多いとか。「食を通じて家族の絆を深められたら」とご主人。自らもキッチンに立ち、奥さまと一緒に料理を楽しんでいるそうです。
　リビングは夫妻の大好きな京都の町屋をイメージ。どっしりとした梁や柱に、格子窓や和紙の明かりで「粋」を表現しています。スギやヒノキなどの天然木に漆喰の壁と、本物にこだわった日本建築。時間とともに味わいを増し、家族をいつまでもあたたかく包んでくれそうです。