余計なものは持たない主義。それは村井さんにとっての生き方そのものであり、家づくりにおいてもまた、その感覚が生かされていることがわかります。「必要なものは、引き出しに収まる分だけ買うようにしています」と話してくれたのは奥さま。そんなライフスタイルを象徴するような村井邸は、シンプルで機能的。そして、素材のよさが際立ちます。
　仕切りを最小限にし、間取りをシンプルに。そして、木はすべて無垢を採用。とくに床の杉板は厚さ３cmのものを使っているので、防音や断熱にすぐれています。断熱材はセルロースファイバーで、夏涼しく、冬暖かく、さらにエコロジーなのも特徴。「室内に響き渡る音もきれいなんですよ」とご主人。セルロースファイバーのよさを痛感しているようです。
　ＬＤＫに入ると、屋根勾配を生かした高い天井には、地松の梁がかけられ、奥の和室にはベンガラ色の床の間が現れます。そして床の間の飾り棚には立派な神棚が。じつはこの神棚は、宮大工をしていたというご主人の祖父が作ったもの。母屋で長年大切に飾られていたものを、こちらで受け継いだのです。「床の間も最初は無難な色を考えていたのですが、思い切って正解でした」と奥さま。歳月とともに味わいを増した神棚や仏間の建具を引き立てる、美しい和空間が実現しました。
　「餅は餅屋という感じで、和さんにすべておまかせ。でも年配の人が遊びに来ると、“すごくいい仕事をしているね。こんな家、今なかなかないよ”と褒められます」。シンプルな間取りと本物の素材、職人の技が凝縮した村井邸。住む人の凛とした姿が家の美しさと重なって見えました。