玄関を入ると奥に続く土間の回廊。手前の格子を開けるとリビングにつながり、奥には巨大な収納とキッチンにつながる動線を確保しています。「子どもが学校から帰ってきたら、ランドセルだけポーンと置いて遊びに出ていく。玄関とリビングのつながりはそんなシーンをイメージしました」と語る奥さま。実はＹ邸は奥さまが間取りを考え、図面を引いています。田舎の農家の家をコンセプトにしたＹ邸は、わんぱくな子どもたちの声が響き、大人は季節の恵みを堪能する…そんな暮らしを叶えました。
　Ｙ邸の最大の特徴は、可変性に配慮した間取り。１階も２階も今は必要最小限の壁だけにし、親子のコミュニケーションを大切にしているのがわかります。「農家の家が、ふすまを取ればひとつの大空間になるように、この家もその発想を生かした“田の字”の間取りを取り入れています」という言葉から、奥さまが冒頭で語ったコンセプトの意味がわかりました。とくに２階の子ども部屋はそれが顕著に表れています。どんなふうにリフォームしようか、今から考えることもあるそうです。そして、間取りを考えていた当初、「将来的なことを考えて今は間取りをシンプルに。あとからでも直せますから」という和住宅社長の言葉に、家づくりのパートナーとして心強さを覚えたとも話してくれました。
　リビングの大黒柱には長男陽之くんの背丈が刻まれており、これから長女和佳奈ちゃんの成長とともに歴史を刻んでいきます。「ここに住み始めて五感で暮らしを堪能できるようになった」とも語ってくれたＹさん。梅酒を漬けたり、縁側で風に吹かれたり、大人たちの暮らしも豊かに彩られていくようです。日本の暮らしの原風景を見るようなＹさんの理想郷はこうして作られていきます。