コンセプトとなった“杜のネストローブ”とは、家族の距離感をテーマにそれぞれのプライベートを大切にしながら、家族の時間も心地よく共有できる空間をイメージしたもの。個室を一人ひとりのネスト（巣）と捉え、そこから大きな広場へとゆるやかにつながる設計。個室への導入はあえて壁や棚を用いて“くぐる”ように。個室と広場の間を通り抜ける感覚は、巣穴の世界観そのものです。
　ご夫婦は同じ職場ということもあり、打ち合わせしながら仕事ができるスペースがほしいという要望がありました。またご主人の「シェアハウスみたいな雰囲気がいいな」という言葉もあり、ＬＤＫの中央に造作の大きなテーブルを配しました。大きなテーブルは食事をとる場所として、また読書やワーキングスペースとしても使います。空間やエリアを一つの役割に限定せず、可変性に配慮した余白をもたせた設計で、フレキシブルに過ごせるのが特徴。
　「いわゆる定型の家ではなく、私たちらしい家になっていたことが決め手となりました」。コンセプトを核に形を導き出した家は、隅々までぶれることがありません。空間に作られたストーリーのなかで、住む人の暮らしは丁寧に営まれていきます。