四万十市に事務所を構える「有機的建築村上」の代表が、故郷に建てた邸宅。「家を建てるならモデルハウスを兼ねた住まいにしたい」という代表の思いもあり、高知県産の四万十ヒノキとスギをはじめとした自然素材をふんだんに使い、手刻みや墨付けなどを駆使した昔ながらの伝統構法で建てられています。
　邸内は、家じゅう木のすがすがしい香りが感じられ、心落ち着く空間が広がります。明るく開放感にあふれた吹き抜けリビングの中心に佇む、存在感のある薪ストーブは、奥さまがマイホームを持つときの夢だったとか。住み始めたばかりの頃にさっそく活躍したそうで、まだ肌寒い時期でも暖かく過ごせたといいます。外壁や内壁に使用しているのは、調湿や消臭、耐火性にもすぐれる漆喰。健やかな暮らしを支えるだけでなく、手仕事ならではの風合いと質感が楽しめます。壁の中には、天然の羊毛を使った断熱材が隙間なく敷き詰められ、室温を一定に保ってくれるため、年間を通じて快適に過ごせます。
　ご主人も料理をすることがあるそうで、キッチンは夫婦ふたりでも作業できるよう調理台を広めにし、後ろの食器棚との間をゆったりと余裕を持たせました。ダイニングの片隅にはカウンターを設け、ちょっとした作業に役立てたり、お子さんたちが宿題をしたり、多目的に使えます。子供部屋にはそれぞれロフトを作り、下は収納として活用できるといった設計上の工夫も光ります。
　取材中、お子さんたちがのびのびと元気よく駆け回り、２匹の愛猫たちもゆったりとくつろいでいました。その姿からは、自然素材の家が持つ心地よさが伝わってくるようでした。