出会いは数年前。展示場を巡り、偶然目にした事務所のドアを叩いたのが最初だった。そのあとさまざまな経緯を経て、自宅を建て替えようと決めたときに思い浮かんだのがＨＡＳ（エイチ・エーエス）だった。「以前のご縁を大切にしたかったし、せっかく建てるのだからオリジナリティのある家にしたかった」とご主人。
　建築家から提案されたのは、2つの建物が廊下でつながり、大きなひとつの屋根の下にあるという〝母屋と離れ〟が一体化したような家。古きよき日本の暮らしと現代の技術や機能を併せた住まいだ。「子どもたちが独立して夫婦ふたりの暮らしなので、部屋数は多くなくていい。毎日を快適に、ホテルライクな生活を送りたい」。そんなご夫婦の希望を汲み取り、1階に毎日の生活の舞台となるＬＤＫ、水回り、和室を設け、普段の生活はすべてワンフロアで完結する間取りに。2階には来客をもてなすためのセカンドリビングを設けた。
　大きなこだわりのひとつである外壁は、セメントの質感を生かした高機能なものを採用。歳月を経ることで風合いが増し、経年変化を楽しめる。そして、この住まいの意外であり特徴でもある点が、外壁素材を屋内にも取り入れていること。廊下を隔ててＬＤＫ側の〝母屋〟と、水回りのある〝離れ〟を意識的に切り離す手立てとして、離れの壁を外壁素材で覆ったのだ。〝母屋と離れ〟を日々実感できる造りに、「毎日を新鮮な気持ちで過ごすことができる」とご夫婦は大満足。5枚のトップライトから差し込む陽光が暮らしを明るく照らし、室内にいながらも屋外を感じることのできるハイクラスな住まいは、ご夫婦に笑顔の日々をもたらした。