ここはかつて、ご主人の生家があった土地。この家に住み始めて２年の月日が経った今、「同じ場所なのに景色も住み心地も全然違いますね」とご主人は話します。その心地よさの秘密は、木の質感をたっぷり堪能できる素材使いと、景観を取り入れた巧みな設計にありました。
　材木店の娘として今も実家の手伝いをしている奥さまは、その審美眼で多様な木材を厳選。１階の床はカバザクラ、壁や天井はスギ、２階の床はクルミと、木の色や質感を熟知したこだわりのセレクトが光ります。
　設計面では、リビングの中央にウッドデッキを配し、それを囲うように大きな窓をコの字型に設置。採光に効果的なだけでなく、のどかな景色を映し出すキャンバスの役割も果たしています。「夏には青々とした田んぼが目の前に広がって、まるで芝生のように見えるんです。遠くの山々も深い緑に染まってきれいなんですよ」。借景を味方に付けることで、家にいながらも四季折々の情景を楽しんでいるようです。
　夜風が気持ちいい季節には、デッキに出て晩酌をするのが夫婦の楽しみなのだそう。日常のなかに自然と接する時間や空間を設けることで、日々の暮らしはぐっと豊かになっていくのです。